NaCl水溶液(100mg/ l )を電気分解して得られた電解生成水を用いて,食品加工などの産業分野において広く使用されている3種類の加水分解酵素(タンパク質分解酵素のズブチリシン,デンプン分解酵素のα-アミラーゼおよび油脂分解酵素のリパーゼ)の酵素活性を検討し,以下の結果が得られた. (1) ズブチリシンCarlsbergをECW pH10に溶解して60°Cで反応させると,酵素活性が原水に対して約80%,NaOH pH10aq.に対しても約65%高まった.このNaOH pH10aq.に14mMのNaClを加えると,酵素活性が約80%高くなり,ECW pH10と同じ酵素活性となった.このことよりECW pH10における酵素活性の要因は,ズブチリシンが電気分解により濃縮されたNa+イオンとpHの影響を受け,最高活性と至適温度が上昇したためであることが確認された. (2) 2種類のアルカリ性ズブチリシンSavinaseとNagarseに対するアルカリ性電解水の効果に差があることがわかった. (3) α-アミラーゼをECW pH10およびpH11に溶解した後,37°Cで反応させると,酵素活性が原水に対してECW pH10では13%,pH11では20%高まった.この要因は,アルカリ性電解水の影響を受けてα-アミラーゼ自体のターンオーバー数が約5%,溶解性が約10%向上したことから,これらの相乗効果であることが示唆された.さらにα-アミラーゼの活性化は,電気分解により濃縮されたNa+イオンとpHの相乗効果であることが確認された. (4) リパーゼを酸性電解水に溶解した後,30°Cで反応させると酵素活性が原水に対してpH4では16%,pH3では22%高まった.この要因は,電気分解で濃縮されたCl-イオンとpHの影響を受けていたが,これ以外の因子もあることがわかった.