幼児および青年の咀嚼の実情を知るため,テクスチャーの異なる9種の食物咀嚼時の筋活動量を両者間で比較した. (1) かたさおよび咀嚼性の値が高い食物であるピーナッツ,ごぼう,味付けたこ,たくあん,するめ(いずれもp<0.01)およびポークチャップ(p<0.05)では,青年より,幼児の咀嚼回数が有意に多かった. (2) 咀嚼機能が劣っている100回より多い咀嚼回数の階級値の幼児が1.7(かまぼこおよび白米飯)から25%(するめ)おり,咀嚼機能の発達状況の違いが考えられた.それに対し,100回より多い咀嚼回数の階級値の青年はピーナッツおよび白米飯を除き,1.9(かまぼこ,玄米飯,ポークチャップ,味付けたこおよびたくあん)から3.7%(ごぼうおよびするめ)であり,咀嚼機能が十分でない人は青年では幼児より少なかった. (3) 幼児の総最大振幅比と青年のそれとの間に差があった被験食物は白米飯(p<0.05),玄米飯(p<0.01)およびピーナッツ(p<0.05)であって,米飯類は青年に比し,幼児で有意に低かったが,ピーナッツでは有意に高かった.その他の被験食物の総最大振幅比は幼児と青年の間に有意差がなかった. (4) 咀嚼性が高い(1.00以上)食物(ごぼう,ポークチャップ,味付けたこ,たくあんおよびするめ)は,側頭筋および咬筋における総最大振幅比の分布の広がりが,幼児および青年ともに顕著であった.そのため,これら咀嚼性が高い食物の咀嚼回数は幼児と青年の間に有意差を認めたにもかかわらず,それらの総最大振幅比は幼児と青年の間に有意差を認めなかった.