本研究では,水/エタノール溶液系での不飽和脂肪酸自動酸化に及ぼすトレハロース添加の影響について,1)不飽和脂肪酸からのヒドロペルオキシド(HPOD)生成過程および,2)HPODの分解,アルデヒド生成過程を検討し,トレハロースの脂質酸化抑制作用を考察した. 1) リノール酸(LA)からのHPOD生成はトレハロース添加濃度に応じて減少し,反応14日目のHPOD量は,トレハロース終濃度7.3mMでは2.57mg/gLA,14.6mMでは1.87mg/gLA,29.2mMでは1.28mg/gLAであった.一方,α-リノレン酸(LNA)からのHPOD生成量もLAと同様にトレハロース添加濃度に応じて減少し,トレハロース終濃度7.3mMでは7.80mg/gLNA,14.6mMでは6.30mg/gLNA,29.2mMでは4.50mg/gLNAであった.糖アルコールであるマルチトール添加系のHPOD生成量もトレハロース添加系と同様に低値であった. 2) トレハロースおよびマルチトールによるHPOD分解およびHPODからの揮発性アルデヒド生成抑制作用は弱かった. 以上の結果から,トレハロースは不飽和脂肪酸からHPODを生成する酸化初期反応を抑制することが示唆された.