自己消化処理によりγ-アミノ酪酸(GABA)を蓄積させたアガリクス茸が軽症高血圧者の血圧に対してどのような影響を及ぼすかを検討したところ,以下のことが明らかとなった. (1) オープン試験として軽症高血圧者の男性10人にAG-GABAカプセルを摂取させたところ,収縮期血圧では摂取1週間後で,拡張期血圧では摂取3週間後で開始時に比べて有意に血圧降下作用を示した.AG-GABAの摂取をやめると収縮期および拡張期血圧はほぼ元の状態に戻り,これは紅麹GABAが高血圧者の血圧に及ぼす現象とよく一致していた. (2) 二重盲検クロスオーバー比較試験として軽症高血圧者の男性14人をA群(1∼4週:AG-GABA摂取;6∼9週:プラセボ摂取)およびB群(1∼4週:プラセボ摂取;6∼9週:AG-GABA摂取)の2群に分けて試験評価したところ,AG-GABA摂取期間中に収縮期血圧および拡張期血圧とも観察期間に比べて有意な血圧の降下を示すことが明らかとなった.これは本人または看護師のいずれが血圧を測定しても同様の結果を示した. (3) 採血検査(血清生化学検査・血液学的検査)の値では大きな変化は認められず,これは被験者の血中脂質が正常域にあったことに起因すると考えられ,むしろ長期間にわたる被験者の生活様式がほぼ一定していたことが示唆された. (4) 以上のことからAG-GABAには軽症高血圧者の血圧値を降下させるが,必要以上に降圧させることはなく,また,摂取をやめても強いリバウンドを示さないこのような働きはGABAの特異的な降圧機能として安全に作用することを印象づけることができた.