乳清タンパク質加熱ゲルの力学物性をねじり破壊試験によって評価した.酸性及び中性pHで形成した加熱ゲルの応力-歪曲線は共に見かけ上線形近似できることが示された.酸性pHで形成した半透明の加熱ゲルは弾性率が大きいが破壊歪が小さい脆いゲルであったのに対し,中性pHで形成した半透明ゲルは弾性率が比較的小さいものの大きな破壊歪を示した.加熱ゲル前駆体の原子間力顕微鏡観察を行ったところ,酸性pHにおいては加熱変性した球状タンパク質単量体が数珠状に凝集すること,また中性pHにおいては単量体の数倍程度の直径を有するほぼ球状の1次凝集体の形成とそれに続く1次凝集体同士のランダムな凝集という2段階の過程を経ることによってゲルが形成されることが示唆された.これらの結果は,力学物性のようなゲルの巨視的性質にナノメートル領域におけるゲル網目の微細構造の差異が反映されることを示すものであると考えられる.