本研究では,焙煎ゴマ油の品質を極微弱発光計測により推定するため,詳細にゴマ油からの発光現象の解明を行った.焙煎度合いと発光現象の検討や,加速試験や貯蔵試料による品質劣化と発光現象の検討を行い以下の結果が得られた. (1) 焙煎により,ゴマ油に含まれる中のセサモール量が増加することで抗酸化性が増し,極微弱発光量も多くなることが明らかになった. (2) 加熱,通風による品質劣化時には,ヒドロペルオキシドの生成・分解などの化学反応が安定するまでの状態,劣化反応が安定している状態,劣化が急激に進む状態の3つの反応系の存在が,微量成分の分析や極微弱発光の計測により明らかになった. (3) 加熱,通風処理中の試料の色度変化は発光量には影響を及ぼさないことが明らかになった. (4) 加速試験や貯蔵試料による品質劣化と発光現象の検討より,焙煎ゴマ油は劣化に伴い極微弱発光量が減少することが確認され,抗酸化性の高い焙煎ゴマ油に特有であることが明らかになった. (5) 焙煎ゴマ油からの極微弱発光現象の要因の一つとして,セサモールの関与が示された. (6) 発光量が品質劣化に伴い減少する自発極微弱発光計測を利用して,焙煎ゴマ油の品質評価が行える可能性が示された.