日本の食料消費パターンが現在も欧米化を進行させているか,もしそうでなければ世界の中でどの方向に向かっているのかに関心を持ち,統計的解析を行った.この目的に利用できる解析方法が確立していないことから,これまでに報告されている関連手法の問題点を整理するとともに,導入するべき解析方法の検討を行った.その結果,「日本の現在から過去のある年に向けたベクトル」を「現在の2国間軸」に射影するI法が最も適していることが分かった.ただし,問題点も指摘できることから,日本と対象国の2国のデータを使用して主成分分析を行うことを特徴としたII法と併用するのが妥当との結論を得た.これらの手法を用いて解析したところ,日本の食料消費パターンは,80年代までは欧米化してきたが,90年代には方向が変わっていた.90年代の変化は,中南米諸国に近い方向であった.80年代までの欧米化を詳細にみると,60年代と70年代および80年代の方向には"ずれ"があり,60年代は地中海東岸諸国の方向で,70年代と80年代は主要欧米諸国の方向であった.なお,これまでの報告では,日本の食料消費パターンは単純に欧米化したとはいえないとしている.確かに,個々の国に向かって一直線に変化したわけではないが,欧米諸国を群として捉えると,欧米化したと解釈するのが妥当である.