前報14)では,添加する調味料の種類によって炊飯特性が様々に異なり,米飯の仕上がりに影響することが分かった.本報では,これらの調味料が米飯の炊飯特性に影響を与える要因を明らかにし,米飯の物性等にマイナスに影響した調味料については,その改善策を検討した. 1) 炊飯液の物性は,食酢において無添加よりヒステリシスループ面積,粘性係数,降伏値が有意に大きく,米飯の粘りや付着性の大きさに関与しているものと考えられた.カレー粉とトマトペーストは前報14)のように水分量が少なくて硬いにも関わらず,粘りの大きい米飯であった理由として,炊飯液の粘性が高いことが原因ではないかと考えられた. また,トマトペーストで前報14)に示したように炊飯中の温度の立ち上がりが非常に遅く,釜内の温度分布にばらつきがあったのは,炊飯液の粘性が大きいために加熱による対流が起こりにくかったのではないかと考えられた. 2) 調味料の添加により,全般的に糊化温度の上昇,糊化エネルギーの増大が見られた.特にトマトペースト,食塩,醤油において顕著であり,濃度に依存していた.前報14)においてこれら3種の温度上昇中の加熱吸水率が小さかったのは,糊化温度が高く,糊化膨潤に多くのエネルギーを必要とすることが原因ではないかと考えられた. 3) 米飯の糊化度は,炊飯後,20°Cで1時間放置した米飯では,いずれも95%前後の高い糊化度を示し,試料間に有意差は見られなかった.一方,5°Cで24時間低温保存した米飯の糊化度は,上白糖,カレー粉,トマトペーストにおいて無添加より有意に低かった.前報14)に示したように,これらの米飯が無添加より有意に硬くて付着性が小さかったのは,米デンプンの糊化度の低下によることが示唆された. 4) トマトペーストを予め脱気してから添加し,炊飯したところ,炊飯中の温度分布のばらつきは改善され,米飯の水分含量,硬さ,付着性および糊化度に改善効果が見られた.