すし酢成分(酢酸・食塩・糖類)を炊飯後に添加した米飯の冷蔵保存前後における物性を,テンシプレッサーにて米飯1粒ならびに集団粒(10g)での測定を低圧縮試験(圧縮率25%,表層の物性)と高圧縮試験(圧縮率90%,全体の物性)にて行ない,冷蔵保存前後における変化を検討した. (1) 米飯の冷蔵保存前後における物性評価には,集団粒で測定した場合では十分な再現性が得られず,1粒ずつ測定する方法が適していた.表層と全体の物性では,表層の方が変化が顕著であった. (2) 酢酸は米飯の表層の粘りを増加させる効果があった.冷蔵保存後でも硬さ・粘りの変化抑制効果があり,酢酸が飯のテクスチャー変化抑制に有効であることが示された. (3) 糖類は冷蔵保存後の表層の硬さを増加させる傾向があり,今回検討した中では,果糖が最も変化が大きかった. (4) ショ糖や果糖では糖濃度が増加するにつれて,酢酸のテクスチャー抑制効果が低下するが,ブドウ糖や麦芽糖では濃度が増加しても酢酸の効果があまり変わらなかった. 以上のことから,冷蔵下で保存するすしのテクスチャーの変化を少なくするには,酢酸のテクスチャー変化抑制効果をできるだけ損なわないようにするために,果糖の使用は控え,ブドウ糖や麦芽糖を使用するのがよいことが明らかとなった.