商業的に生産されているエチレン処理を伴う豆もやしについて,エチレン処理後の生長に伴う部位別の細胞壁多糖の量的変化を調べることにより,各部位における細胞壁合成の特色並びに各部位における生長が胚軸における細胞壁合成に及ぼす影響を調査し,以下の知見を得た. 1) 子葉の新鮮重は胚軸や根の生長に伴い減少したのに対し,エチレン処理後7日における胚軸の新鮮重は根の7倍に達した. 2) 子葉におけるASSの割合は,エチレン処理後1日までに大きく減少したのに対し,AISは処理後3∼6日の間で大きく減少した. 3) 胚軸および幼根のウロン酸含量は,エチレン処理後3日以内に顕著に増加したのに対し,子葉中のウロン酸の増加は,処理後3∼5日にかけて顕著に増加した.子葉および幼根における中性糖含量は,生長に伴い緩慢な増加傾向を示したのに対し,胚軸では減少傾向を示した. 4) 胚軸では生長に伴い,水溶性および塩酸可溶性画分におけるウロン酸含量が増加した.中性糖含量は低い値を維持するか,もしくは減少した.幼根では生長に伴いキレート可溶性および塩酸可溶性画分におけるウロン酸含量が増加したが,中性糖含量は,低い値を維持した. 5) これらの結果から,リョクトウもやしが生長する際には,胚軸では生長に伴い水溶性および塩酸可溶性ペクチン主鎖の合成活性が高いのに対し,幼根ではキレート可溶性および塩酸可溶性ペクチン主鎖の合成活性が高いと考えられた.