ワイン中の機能性物質のひとつであるリスベラトロールとその関連物質について,ワインの発酵過程での含量変化を分析した. (1) アルコール発酵3日目からのアルコール濃度の上昇とともにリスベラトロールは果皮から抽出され,発酵6日目でほぼ平衡に達した.その過程で,シス異性体の割合が増加し,発酵後半ではトランス体のみが減少していたことから,酵母由来のイソメラーゼ活性により発酵中にリスベラトロールの異性化が起きていることが示唆された. (2) 乳酸発酵過程において,リスベラトロールの増加とパイシードの減少が観察され,果皮から移行したパイシードが乳酸菌由来のβ-グルコシダーゼ活性によって加水分解されてリスベラトロールに変換されるものと推測された.