熱ルミネッセンス法を国内産馬鈴薯の検知に適用するための条件を確立することを目的とし,国内の9箇所の産地で収穫された馬鈴薯に50∼150Gyのガンマ線を照射して,そのTLスペクトルを測定した.また,照射後の流通の過程におけるTL発光強度の減衰について検討した.そして,その結果以下のことが明らかになった. (1) TLスペクトルは産地によってその形状,単位重量あたりの発光量にかなり差があり,これは産地の土壌に含まれるSiO2以外の要素(珪酸塩等)に起因する. (2) TL比を用いることにより,照射,非照射の判別とある程度線量の推定が可能である. (3) 190°C付近をピークとする低温側のTL発光強度は照射直後から急激に減少するが,290°C付近をピークとする高温側のTL発光強度は比較的安定なため,150Gy程度照射された馬鈴薯の場合,日光下等かなり悪い条件で貯蔵されたものにおいても高い精度で検知することができる. (4) 国内で実際に流通している,北海道士幌産放射線照射馬鈴薯についても高い精度で検知することができる.