以上の結果を要約すると次の通りである。 (1) 初学年児童の算数レディネスの一般的傾向の現状はほぼ満足すべきものであること。 (2)これを入学当初の児童の数知識として列挙すれば次の通りである。 算数の数学的側面 Aひじようによく発達しているもの 1. 50までの数を機械的に教えること 2. 具体物による20までの数のかん定, 同一視, 再生, 此較 3. 1位の数字を読むこと及びかくごと 4具体物, 半具体物による10以下の数の加減510以下の数の加減を含む問題解決 (言語問題) B比較的よく発達しているもの 6. 2ずつ10まで数える 7. 逆に10から1まで数える 8. 2位の数字を読むこと 9数字による10以下の加減 10. 具体物, 半具体物による10以下の数の乗除 11図示による1/2, 1/4の理解 Cごく少数のものしか理解できないもの 12. 2位数による位どりの概念 13. 口頭による10以下の数の加減 14図示による3/4の理解 15. 乗除を含む簡単な問題解決 (言語問題) 算数の社会的側面 Aひじようによく理解しているもの 1. 簡単な測定用具の使用 2乗り物の速さの比較 3. 簡単な10前後の数を表わしたグラフの読みと理解 4. 簡単な物の形を図形に置きかえること 5. 単純な図形の基礎的な理解 6. 順番, 右左の理解 B比較的よく理解しているもの 7. 時間単位で時刻を読むこと8. 対の意味 9. 100円, 10円, 5円, 1円, 50銭の貨幣価値の関係 10. 曜日, 今日と明日の関係 11. 個数による買物の仕方Cごく少数のものしか理解できないもの 12. 1年の月数, 1月, 1週間の日数 13. 1時間, 30分の時間経過 14. ダースの意味 (数量) 15. 方向の南北の関係 16. 誕生日 (月, 日) 17, 目方による買物の仕方 (目方の単位) (3)個人差は社会的側面よりも数学的側面において-そう大きく, 2年よりも1年において-そう大きい。 (4)地域差は2年においてよりも1年において, また数学的側面においてよりも社会的側面において-そうけん著に認められる。1年においてみられた大, 中小, 農の明瞭な3地域差が, 2年においては大と中小との間の差はなくなり, 大, 中小と農の地域差となるのは注目されてよい。 (5)学校差は1年においてよりも2年において, また大, 中小よりも農山村において-そう著しい傾向を認める。 (6)男女差は1年においては3地城ともに, 2年においては農山村においてのみ認められる。 (7)幼稚園などの特別な経験の影響は1年においてはきわめてけん著に認められるが, 2年になるとほとんど認められなくなる。 算数レディネスというからには, このようなテストの結果が, 将来の算数学習とどのような関係を示すかについて研究することは, 今後に残された多くの問題の中でも, もつとも重要なものであると思う。 最後に, この研究は四日市市立数育研究所の神沢良輔, 諸戸尚一両君との協同研究であることを附記しておきたい。なお, 検査の実施に際しては多くの方々からひじような御援助をいただいたととをことに深く感謝する次第である。