等質の2集団に於ける学習指導法の相異が児童の社会的行動の上に如何なる変容をもたらすかについて, 一ケ年間の実験の結果は卞記の諸項に要約することが出来る。 1) 児童中心の学習指導法は教師中心の学習指導法に比して児童の社会的行動を促進する。 2) 交友関係を社会測定的方法によつて測定して見ると, 児童中心の指導法は学友間の理解と交友関係を増進し, 交友拒否の関係に於いて減少する傾向が見られる。 3) 社会的行動の内容を形成することを目的とする社会科学習の成績を比較して見ると, 児童中心の指導法は, 教師中心の指導法に比較して成績を低下させないばかりでなく, 社会的技能においては増進する傾向が見られる。従つて社会科に関する限り学力低下の原因を学習指導法そのものに帰せらるべきでない。 4) 知能の要因を考えると, 知能の高いものにとっては児童中心の指導法が有利であり, 知能の低いものには不利であるような傾向が見られる。 5) 児童中心の指導法では行動の積極的自主的傾向を助長し, 教師中心の指導法では消極的他律的傾向が助長される。 6) 児童中心の学習指導法では自主的に協力する態度を増進するが, 教師中心の学習指導法では, 利己的であり, 非協力的傾向があらわれる。 7) 児童中心の指導法では学習意欲が旺盛である。教師中心の指導法では, 時間内はともかく時間外まで延長されることが少い。 8) 上述の諸傾向は他教科の学習態度にもある程度転移が認められる。