昭和23年12月滋賀県下小学校4年から中学校3年に至る殆んど全員に対して住田式知能テストを施行したが, その時のI. Q 70以下の生徒1409名を対象にして調査を行い903名についてその社会的適応を中心とした実態を把握, 検討を加えた。 1対象を生活様式 (I家事手伝411名, II就職492名) 周囲からの理解の程度 (Iにおいて1. 理解64名, 2普通 315名, 3無理解32名IIにおいて4理解38名, 5普通348名, 6ちぐはぐ87名, 7無理解19名) その中で示している安定の度合い (i安定304名, ii普通354名 iii問題245名) から分類し, 8つの現象的適応像を把握した。型と頻数次の如し。第I型 (I-1-i・ii) 37 名, 第II型 (I-2-i・ii) 213名, 第III型 (I-1・2 -iii) 129名, 第IV型 (I-3-ii・iii) 32名, 第丁型 (II-4・5-i・ii) 339名, 第VI型 (II-6・7) 87名, 第VII型 (II-7) 19名, 第VIII型 (II-4・5-iii) 47名 28つの現象的適応像について本人の年令, 性別, I. Q, 学業成績, 普通学級における特別指導の有無・内容・方法, 職種・仕事の程度, 通勤・住込の別 (第III群), 家業, 生活程度, 家族数, 保護者の学歴との関係をみたが, いずれも両属性が独立であるとの帰無仮説を棄却しない。 3この現象的適応像は不変のものでなく, 在学中のそれに比べてよくなつている者279名, 不適応が除かれた程度の者317名, 大して変化の認められないもの211 名, 悪くなつた者45名, 不明51名となつている。 4移行因子の分析をするために2で用いたと同じ因子について移行の仕方との関係をみたが, 就職・家事手伝と移行の仕方の間を除き, いずれも両属性が独立であるとの帰無仮説を棄却しない。 5この変化を来したのは年令的成長, 学校卒業後の環境変化, 特に仕事というものを中核とした綜合事態の中にあるのだと考えて事例的検討を加えて集計した結果仕事乃至は生活に対する理解・熱意・意欲の発生・自覚といつた事が適応像移行の決定因子である事が推定された。かくてその程度により内的適応型216名, 内的未適応型538名, 内的不適応型149名を把握した。先の8つの現象的適応像とこれを組合わせて考えたものを適応像とする。 6生活意欲の発生を促す因子を調べるために2で用いたと同じ因子について関係を調べたが, いずれも両属性が独立であるとの帰無仮説を棄却しない。しかし, 内的適応の仕方と現象的安定の程度及び周囲の本人に対する理解の仕方の程度との間では両属性が独立であるとの帰無仮説を棄却する。