(1) 従来の性差研究はいろいろの観点からなされているが, 5つの立場に分類できる。 (2) 性差研究は能力や性格の差異を明らかにするよりも, その規定要因となる性差意識の性差を解明することが生物学的差異と文化的差異の条件を統合した基本的な背景的研究法といえる。 (3) 性的役割の受容・形成に男女いずれが困難であるかについては学説は賛否わかれているが, 本研究では女子の方がより困難であることを立証した。 (4) 性差意識は5才児ではすでに男女ともある程度明らかに形成されている。 (5)女児は幼児から中学年に至るまで男性化の傾向へ指向している。これは男権的な文化的社会的背景の反映と考えられる。 (6) 能力に関しては男女共男性優位視の傾向がある。 (7) 好ましい性格に関しては男女それぞれ自己の性を優位視し, 好ましくない性格は男女とも女性に帰属させる傾向がある。 (8) 好ましい道徳性は男女それぞれ自己の性に帰属させる傾向がある。好ましくない道徳性は, 小学生では男女とも男性に帰属させる傾向があるが, 中学生では女子はこの傾向に変動はないが, 男子は女性に帰属させるか, または同等視する傾向がある。 なお以上の結論は都会の幼児児童に関してであり, 農村社会ないし僻地や年令・調査数をさらに拡大して比較検証することが必要となろう。また年令による認識のしかたも分析検討し, あわせて性差意識と機能の性差との関連について検討する課題が残されているが, これについて目下研究継続中であり, 今後において報告したいと思う。