時代を異にすることによって, 社会的文化的条件, 身体的発達条件の異る青年の精神発達の相違を知るために, 中学, 高校生を対象に, 質問紙による調査を行った。 昭和初期の結果と比較すると, 自我意識の確立が現在のものに顕著で, 他者や権威に頼る割合が減っている。一方友人関係への信頼感は強くなって, 孤独感がへっている。 青年の悩みでは, 勉強や将来の生活に関するものが増えている。 死については報恩といった感情は少くなり, 面白い目にあってからと云うものが増え, 神仏についても, その存在を信じないものが多くなって, いわゆるドライな傾向が出ている。 人生に対しては, 夢や希望が少くなり, 生活態度も積極的なものが少くなっている。そして個人的消極的態度が多くなり, 平凡な安定した生活を理想とする。その結果, 職業志望にあたっても, 会社員をあげるものがもっとも多い。終戦後の昭和24, 5年の結果との差は, 昭和初期とくらべたほどには, はっきりしておらず, むしろ現在の傾向は, この終戦直後の時代に既に始っていると考えられる。 これによって, 戦争という事実を通して, 大きく変化した社会と, 加速的傾向にある身体発達の影響は, 明らかに青年の精神発達, 態度形成にかなりの変化を与えていると云えよう。