本研究は某企業体に昭和30年より32年にかけて入所した2708名を調査対象として, 内田・クレペリン精神検査の妥当性に関する総合的検討を行ったものである。 調査結果を要約すれば次の如くである。 (1) 内田・クレペリン精神検査結果b'fの者はa, a', a'f, b, b'の者に比して災害傾向が大きい。 (2) 職業適性GVN検査と災害傾向との間に有意な対応関係は見出されなかった。 (3) 内田・クレペリン精神検査の曲線型と昇給格付との間に一義的な対応関係がみられる。すなわち本検査の定型 (a, b), 準定型 (a' , b'), 準々定型 (a'f, b'f) の順に従って, 昇給格付が低くなる。 (4) 職業適性GVN検査と昇給格付との間に一義的な対応関係がみられる。すなわち, 本検査得点の高い群ほど, 昇給上位の者が多い。 (5) 昇給格付と災害傾向との間に一義的な対応関係は見出されなかつた。 (6) 内田・クレペリン精神検査と職業適性GVN検査との相関は有意であるが, その度合は低い。(連合係数C=0.217) (7) 内田・クレペリン精神検査, および職業適性GVN検査, 災害度数, 昇給格付の4要因について因子分析を行い, 次の2個の因子を見出した。すなわち第1因子は「知能的・人格的因子」, 第2因子は「情意的・人格的因子」である。