ロール・プレイングを用いて, 意見変容を次の3点から研究しようとしたものである。すなわち, (1) 演技者と聴取者の意見変容の比較, (2) 積極的演技者と消極的演技者の意見変容の比較, (3) 話題の解釈可能性の違いによる意見変容の比較である。 被験者は福岡市名島小学校5年生, 演技者32, 聴取者96名である。 二種の集団群が作られ, 一方が積極的演技者群, 他方が消極的演技者群であった。 話題は4つ与えられ, 演技者は1人につき1つの話題について定められた方向に, 他の成員に対して意見を述べるよう求められた。 意見調査が, その実験前後に行われ, その間の変化が各条件毎に比較された。 結果を要約すれば次の通りである。 1) 積極的集団においては, 演技者の方が聴取者よりも, 唱導した方向に意見を変容した。 2) 消極的集団においては, 演技者も聴取者も意見の変容に差は見出されなく, 両者とも, 最初の意見を保持する傾向を示した。 3) 従って, 積極的参加の演技者は消極的参加の演技者よりも, 自分の唱導した方向へ, 自分自身の意見をより多く変容させた。 4) 解釈可能性の多い, Ambiguityの高い話題に対する意見変容が, 解釈可能性の少い, Ambiguityの低い話題に対する意見変容よりも大きい傾向が見られた。 以上の結果と, これまでなされた研究結果とを考察して, 次の2つの仮定が立てられるであろう。 1) 公けに表明する意見が, 自分の私的意見と同じであっても違っていても, その事態がその個人の意見表明を積極的になすものであれば, その個人の私的意見は, 表明した方向に変容するか, 強化されるであろう。 2) 顕現性が高く, 解釈可能性 (Ambiguity) の高い話題に対しては, 唱導した方向への意見変容が大であり, 顕現性が低く, 解釈可能性が低い話題に対しては, 意見変容が小であろう。