本調査は, 九州大学専門課程の男子学生寮 (K, M, N, S) の全寮生について, 寮生活における態度・行動の実態を知ると共に, それが, 管理運営評価の高低に, どのように関係しているかをつかみ, あわせて, L. Festingerらの共同研究の二, 三の結果を検証し, 更にに4年前の同種調査研究と比較検討しようとしたものである。その結果を要約すれば, 次の如くである。 1 学生寮の管理運営評価の高い学生寮では, 寮生大会に対して, 「好意的・活動的」態度・行動への集中がみられ, 寮生の態度・行動に, 高い斉一性が認められる。これは, L. Festinger及び, 33年調査の研究結果とも, 一致している。 2 管理運営評価の低い学生寮では, 「中間ないし無関心的・非活動的」態度・行動への集中がみられ, その意味で, この寮の寮生大会に対する態度・行動に斉一性が見出される。この結果は, L. Festingerらの結果とはほゞ一致するが33年の結果とは, 若干くい違っている。 3 寮生の, 寮生大会に対する態度・行動は, 寮幹事の態度・行動に影響される面が多く, ひいては, それが, 管理運営評価にも関係していると思われる。 4 管理運営評価の高い学生寮の凝集度は評価の低い学生寮のそれより高い。(L. Festingerおよび33年の結果と同じ) 5 管理運営評価の高い学生寮において, 「好意的・活動的」態度・行動グループの凝集度が, それ以外の態度・行動グループのそれより高い。(L. Festingerおよび33年の結果とも一致) 6 凝集度の高い集団, 即ち, 管理運営評価の高い学生寮には, 寮生大会に対する寮生の標準的態度・行動が存在するが凝集度の低い集団, 即ち, 管理運営評価の低い学生寮には, 寮生の標準となるべき態度・行動は存在しない。この結果は, L. Festingerらの研究結果とは, ほゞ一致するが, 33年調査結果とは解釈上の差異がみられる。 7 施設に対する満足度は, 寮滞在希望期間や, 友人に入居をすゝめる寮の選択に若干の影響を及ぼしているが, 管理運営の評価と直接の関係は認められない。 8 管理運営評価の高い学生寮の寮生は, 評価の低い学生寮の寮生よりも, その寮に対する滞在希望期間が長い。(33年の調査結査と一致) 9 友人に入居をすゝめる寮の選択は, 主として, 施設の良否, 便不便によると思われるが, 寮生の凝集度や, 態度・行動, ひいては, 管理運営の評価とも若干の関連が認められる。 以上の諸結果から, 管理運営評価を規定している要因として最も密接な関係があるのは, 寮生大会に対する態度・行動, および, 凝集度であり, 寮滞在希望期間や友人に入居をすゝめる寮の選択も, 評価の高低にかなりの影響があるが, 施設の良不良, ならびに施設に対する満足度は, 管理運営評価に直接の影響を及ぼしていないということが出来る。 このことは, この4年間に施設の改善がほとんど行われず, 施設に対する満足度にも変化がみられなかったM寮において, 寮生大会に対する態度・行動および凝集度には, 著しい変化があり, 寮滞在希望期間や友人に入居をすゝめる寮選択にも変化が生じていることからも明らかである。