本研究では, 組織体における第一線監督者と第二線監督者の二段構造を実験室的に構成した. さらに目標達成機能としてのP型と過程維持機能としてのM型, およびその両者を兼備したPM型という三つの監督類型を操作的に導入した. つまり, 第一線および第二線監督者のそれぞれに, P, M, PM型の組み合わせをつくり, これらの監督者の行動類型の下で, IBMカードの穿孔数を数える単純作業を3人の作業者に行なわせた. 作業者としての被験者は, 郵政研修所研修員, 平均年令22才男子, 15名. 第一線監督者は心理学専攻の助手および大学院学生, 5名. 第二線監督者は実在せず, その指令は紙に書かれたものであった. 作業は1回50分. 13回連続して作業を行なった. その結果を要約すれば次の如くなる. 本実験の条件下において 1. 第一線監督者の行動類型, P, M, PM型は, 被験者の認知結果と行動観察によって確証された. 2. 第二線監督者の行動類型, P, M, PM型に対する被験者の認知結果に有意差は見出されなかった. 3. 第一線監督者の行動類型PM型の条件下でもっとも生産性が高く, 第2位はP型, 最低がM型であった. 4. 作業の面白さの程度については, 第一線監督者の行動類型PM型が, P型, M型より有意に大であった. 5. 集団の凝集性ないし誘引性, 疲労感に関しては, 第一線監督者の行動類型PM型, P型, M型相互間に有意差は見出されなかった. 6. 第一線監督者に対する被験者たる作業者の好意度は, PM型がP型より有意に大であった. M型とPM型との間に有意差はなかったが, PM型はM型より好意的である傾向が見出された. 7. P型, M型を比較した場合, 監督者への好意度は, 第一線監督者, 第二線監督者ともに有意差はなかったが, M型の方が, P型より好意度が大であった. 8. 本実験条件下で, 生産性とモラール増大に関する最適度の刺戟状況は, M的機能がP的機能に相乗して, M的機能が, P的機能に対して触媒的効果を生ずる状況である. 9. 第一線監督者の行動類型PM型の場合, 第二線監督者の行動類型がP型よりも, PM型の方が, より生産的であった.