示唆の受容・拒否について, 実験的考察を試みる一連の研究のうち, とくに, 源と伝達者の関係の点に焦点を合わせて検討したところを報告した. 源と介在者が存在する事態で, 源に対する信頼感の形成が行なわれる時, 介在者は, 源とは独立に存在して, 信頼感は, 源そのものに対して形成されることと, 源からの示唆が, 示唆される側の予期を越えた範囲・方向を示すものである場合, 信頼感の程度の高低に合致した傾向での受容・拒否は必ずしもあらわれず, 源と示唆との分離によって, 信頼感を高い程度にもっている群では受容傾向の減少をきたし, 信頼感の低い群では拒否傾向の減少をきたすこと, この2点に主眼を置き, 「目測」 を実験手続上導入し, これらの検証につとめた. 被験者は中学2年生であり, 源には, 抽象的な人物が設定され, 伝達者は筆者がこれにあたった. 信頼形成過程, 形成された信頼感の程度, 示唆の受容・拒否, それにともなう示唆と源との分離, 「源-伝達者」 の関係等について資料を整理検討した. 信頼感の高い群では, 受容傾向の減少がみられたが, 信頼感の低い群では拒否傾向の減少は顕著にはみられず, 受容傾向の増加が一部にみられた. これに対するさらに深い追及と, 伝達者の側の方の巾広い検討などが今後の解明をまつ点として存在している.