意見変容を, 個人と話題との関連性という観点から分析しようとするものである. 関連性として, 次の2つの次元が導入された. (1) 話題に対する関心度 (concern) (2) 話題に対する自我関与度 (ego-involvement) 被験者は, 大学生であり, 次のような結果が得られた. (1) 自我関与を示す話題に対しては, 関心度が高く, 自我関与を示さない話題に対しては, 関心度が低いという一貫した傾向がみられた. (2) 話題に対して高い関心を示すものの中, 自我関与を示す被験者と自我関与を示さない被験者との比較において, 唱導された方向に意見を変える率が異った, 自我関与を示す被験者は, 示さない被験者に比べて, 唱導方向への変化が少く, 逆方向の変化が大であった. (3) 関心度が高く, 自我関与を示す被験者は, 自分の意見に対する確信度が低くなり, 自我関与を示さない被験者は, 自分の意見に対する確信度が高くなる傾向を示した. (4) 話題に対して, 自我関与を示さない被験者中で, 関心度の高いものは低いものより, 唱導方向に自己の意見を変容する傾向があり, 確信度については, 強める傾向があった. (5) 唱導方向と反対の意見を持つ被験者は, 唱導方向に意見を変容し易いが, 自分の意見に対する確信度は弱まった. また, 唱導方向と同一か, 中庸の意見をもつ被験者は, 唱導方向への意見の変容は少いが, 自分の意見に対する確信度は強まった. (6) これまで行われてきた諸研究に, 2つの傾向が見出されたが, これらの矛盾する結果が, 自我関与度と関心度の2つの次元から解釈された.