本研究は自己 (self), 相互作用 (interaction), 課題 (task) の3つの行動志向性 (orientation) が集団内行動の相互評価といかなる関係にあるかを明らかにしようと試みたものである。 被験者は九大で行なわれた研修会の参加者13名 (うち女子1名)。専門のトレーナー1名の指導によるTグループ (毎回1時間半, 継続して16回のセッション) 終了後, 研究資料がえられた。被験者個個人のorientationの程度は, 第三者としての観察者の評定による。集団内行動の相互評価は, 被験者が記入した評定用紙の結果にもとづいて測定された。結果の主なものを要約すると次のとおり。 1. orientation評定の信頼度は高かった (. 68-. 83)。 2. 自己志向性の高い人は, 課題, 相互作用, コミュニケーション, 影響などの集団過程の諸側面において, 同一集団の他の成員から低く評価された。 3. 相互作用志向性の高い人は, 同一集団の他の成員から 「他の人に気楽な感じをもたせる」, 「他の人をいらいらさせない」 と認知された。彼等は集団の相互作用促進の機能を果たした。 4. 課題志向性と集団内行動の相互評価との間に一義的な関係は見出されなかった。 5. アメリカにおける類似の研究結果と本研究の結果との間にかなりのくいちがいが現われた。