実験は, 実験者による承認おょび否認を意味する非言語的な動作を使用することが, 面接状況の被験者にとって強化事象を構成するのかどうかを理解するため, および長期間にわたる消去の効果がどのような言動に対する規制力をもつのかをみつけるために行なわれた。 (1) 自己関与の口述については, オペラント・レベルの6分間の測定がなされた後, 実験群Iでは6分間の注意と承認を示す非言語的態度が実験者によって示され, 被験者 (児童5年生) に強化された。長い消去期間の前半においては, その強化の影響も認められたが, 後半においては承認的な強化の中断が, 黙殺を意味するnegativeなcueを提供していることが理解された。同じ手続きが, 無視と否認の実験群IIの被験者にも行なわれた。この群の強化期間に与えられた否認的態度は, ほとんど実験群Iと正反対の様相を示し, SR値 (=自己関与の口述数/全口述数) は強化期間に減少を示し, 消去期間の前半にはさらに減少を示すが, 後半には否認的な強化の中断が承認的な意味をもってくることになり, 増加を示している。まったく何の強化も加えられなかったコントロール群の被験者は, 自由連想の時の口述状態と同一パターンがみられた。以上から非言語的な「注意と承認」「無視と否認」を意味する条件は, それなりに強化事象を構成すると判断された。そして消去効果も両条件において顕著な差異を示した。 (2) 自己関与の口述に与えられた評価が, その他の口述にまで波及していくのか, またそれはどのような影響を与えるのだろうかについては, 実験群Iにおいてオペラント・レベルでの自己関与とその他の両口述数と比べて, 強化期間においても頻数は著しく増大しているが, その関係 (相対比) は同じであることが見出された。ただ消去期間の前半で, 自己関与の口述数はその他の口述数と同じくらいの頻数をもつことになり, 後半では両口述数が著しく減少するが, 特に自己関与の口述数はその他の口述数と比べて減少を示している。実験群IIでは, オペラント・レベルから, 強化期間, 消去期間の前半に至るまで, 自己関与の口述数はその他の口述数に比べて減少の一方をたどる。消去期間の後半になって両口述数は著しい減少を示すが, やや自己関与の口述数は増加を示して, オペラントの状態に近づいている。 (3) 長い消去期間で, 両実験群ともに情動的な困惑を示したものもいたが, 話題に対して, あるいは実験者に対して, 若干の側面に有意な差が認められた。