本研究では実験社会心理学的な方法で広告の効果性のテストが試みられた. そのために3つの形式の鉛筆に対する広告コピーが用意された. つまり, 形式I, その鉛筆の有用性を純粋に客観的科学的に表現するもの. 形式II, その鉛筆の有用性を感情的な表現でうったえ, それを客観的資料によって補強するもの. 形式III, その鉛筆の有用性を感情的な表現でうったえるもの. 以上の3つである. 一方中学一年生男女46名が3つのグループにわけられ, 上記の広告コピーのうさの形式Iを第1グループに, 形式IIを第2グループに, 形式IIIを第3グループに, それぞれこんど新発売される “ラロ” という鉛筆の説明資料だとして渡された. 次にその資料 (広告コピー) をもとにして宣伝文句を作成する作業をさせられた. 作業の際に接した資料によるアピール度のちがいが, 謝礼として2本の “ラロ” を取るか5本の三菱かトンボをとるかの選択行動と, ラロはどれぐらいいと思うかという質問による5段階評定及びセマスティクディファレンシヤル法によるイメージのちがいの3種のデーターにより, グループごとに分析された. 結果は, 謝礼として5本の三菱やトンボよりも2本のラロをもらった被験者のパーセンテージという行動的次元でみた場合形式IIが1番, 次に形式III, 形式Iの順. 質問紙による認知的な次元で, ラロはいい鉛筆であると答えた被験者のパーセンテージでみた場合, やはり形式IIが1番, 形式IIIが2番, 形式Iが3番. イメージの次元でポジテイブなイメージをもたれたのは形式IIIが1番, 次に形式II, 形式Iの順であった. さらに付加的な資料として形式IIを与えられたグループが仕事がうまくやれたと答えたものが多かった. このデーターは広告の送り手の側からの働きかけだけでなく受手の側からも何らかの意味で働きかけがあり, むしろ広告の効果性というものはより相互作用的な結果であるということを暗示しているのではないかと解釈された.