ある個人が, ある対象に対して1つの態度をもつということは, その個人内で認知的成分と感情的成分とがその方向と程度において均衡を保っている状態だと仮定し, 態度の変化を, 両成分間の均衡的再構造化と仮定した。その変容過程を5段階に分け, 1) 抵抗の段階, 2) 変容準備段階, 3) 不安定不均衡段階, 4) 認知的感情的再体制化の段階, 5) 安定強化の段階と仮定し, それぞれ, 両成分間の構造的均衡という仮定から解釈しようとしたものである。 被験者は大学生85名で, 「個人の学業成績を試験によって決めるべきではない。」というスティトメントに対する態度を調査し, 彼等の立場と反対の立場, すなわち, 「試験によって, 学業成績を決めるべきである。」という立場のインフォメイションを5回に分けて提示した。その結果, 彼等の態度がどのように変化したかを測定し, 同時に彼等の不安度を測定した。 結果は次の通りであった。 1) インフォメイション提示の数が多くなるにつれて, 意見を誘導方向に変化させるものが大となった。 2) 誘導方向に意見を変化させる直前が不安度の増加が最大であった。 3) 誘導方向に意見を変化させる直前が確信度も最も減少していた。 4) 意見を, 第1回目のインフォメイション後に変化させたものは第1回目に, 第3回目のインフォメイション後に変化させたものは第3回目に, 第5回目のインフォメイション後に変化させたものは第5回目に, それぞれ不安度が高くなり, 逆に安定度は低くなっていた。 5) 一貫して意見を変えなかったもの, 及び, 一貫して誘導方向と逆方向に意見を変えたものは, 不安度は低く, 安定度が高くなっていた。 以上の結果から, 上記態度変容についての5段階仮説が確証され, 態度変化を認知的感情的再体制化とみることができた。すなわち, 態度の変容過程に伴って, 不安は第1段階から次第に高まり, 第3段階において最高となり, 認知的感情的再体制化に伴って次第に減少し, 安定段階となって, 不安はほとんど消え, 安定度が大となると解釈された。