本研究では, 説得的communicationを受けた場合に生じるSleeper effect現象, すなわち, 受け手の意見が, communication直後よりも一定期間後に, より大きく影響される現象の生起条件を, 2つの実験を通して, 明確にしようとしたものである。実験結果から, 次のような結論が得られた。 1) 高い信憑性のcommunicatorからのcommunicationは, 低い信憑性のcommunicatorからのcommunicationよりも, 聴き手の態度を唱導方向により多く変化させるものである。 2) 高い信憑性のcommunicatorからのcommunicationの効果は, 低い信憑性のcommunicatorからのcommunication効果に比較して, 時間経過と共にその効果の減少度は大である。 3) 時間の経過と共にcommunicatorとcommunication内容とが分離するというHovland等の解釈は一般的ではなく, むしろ, 平行する傾向を示した。しかし, communicator想起とcommunication内容想起とが平行するといっても, 2つを相対的に比較すれば, communicatorの忘却の方がcommunication内容の忘却より早いことがわかった。従って, その限りにおいては, communicatorとcommunication内容とは分離すると考えてもよかろう。 4) 低い信憑性のcommunicatorからcommunicationを受けた聴き手の中, 時間経過と共に, communication内容のみを想起したもの, および, communicatorのみを記憶していて, 時間の経過と共に, communicatorを忘却したもののみが, いわゆるSleeper effect現象を示すものと思われる。