本研究は補佐的集団の成員である看護婦が上位集団である医師に対してもつ看護婦自身の自己勢力を4類型に類型化し (Table 2), 各類型における看護婦の態度及び行動傾向を分析し, 吟味しようとしたものである。なお勢力の類型化は看護婦の認知にょって行った。 調査対象はK病院の看護婦123名。調査は1966年10月に質問紙に留置調査法を用いて実施した。 看護婦と医師との相互作用過程において, 看護婦と医師が認知する (1) 看護婦の現有の自己勢力と (2) 看護婦が獲得しょう期待する自己勢力を測定し, (1) 及び (2) のインデックスにもとずき看護婦の勢力認知に関する4類型をえた。 かかる4類型についての結果は次のとおりである。 (1) Hh型 ((1) も (2) も高く認知する): モチ天イター及びハィジーン・モラールが4類型のうち最も高く, 不安傾向が最も低い。同僚集団忠誠得点は最も高い。そして, 医師の監督行動はPM型であると見做し, 看護婦にとってプラスになる事柄のみならずマイナスになる事柄に関しても積極的に医師と接触しようとしている。従って, Hh型は最も安定し, 意欲的であり, 同僚及び医師に対して好意的であると考えられる。 (2) Hl型 ((1) は高いが (2) は低い): モラール, 不安傾向及び同僚集団忠誠得点はHh型に次いで高い。また, 医師のリーダーシップ機能をPM型とみる点ではHh型と同様であるが, 医師とのコミュニケーションに対する態度の点でHh型と若干の相違がみられた。即ち, Hl型はHh型に較べて, 看護婦にとってプラスになる事柄に関して医師とより一層の接触を保とうとする傾向が強い。従って, Hl型は安定しているが, Hh型よりも消極的, 現状維持的行動傾向を示すと考えられる。 (3) Lh型 ((1) は低いが (2) は高い): 仕事及び対人不安傾向が4類型のうち最も高い。モラール及び同僚集団忠誠得点はHh, Hl型に較べて著しく低い。また, 医師のリーダーシップ機能をpm型と極めて低く評価している。そして, 医師とのコミュニケーションに対して最もネガティブである。従って, この型はより多くの勢力を獲得しようと期待するが, 自己の現有の勢力が低いため, そのズレをうめることが困難であると感じ, 不安・葛藤の状態にある。従って, 勢力者である医師に対して著しく非好意的となり, また同僚集団からも逃避し, 自分自身のモチベィションも喪失した状態にあると解釈される。 (4) Ll型 ((1) も (2) も低い): 二医師の監督行動をPM型であるとみているが, 不安傾向はLh型に次いで高く, モラール及び同僚集団忠誠得点は4類型申最も低い。Ll型は現有の勢力が低いにもかかわらず, 勢力を獲得しょうとする期待はない。従って, Ll型は勢力者である医師に強く依存することによって心理的安定感を得ようとしているのであろうと考えられる。