出版社:Japanese Society of Nutrition and Food Science
摘要:1954年と1955年組国民栄養調査結果にあらわれた平均1人1日の摂取食品を基礎として乾燥飼料を作り, そのN含量2.1%の飼料を基本飼料として幼白鼠を飼育する時は類似組成から成る同一N含量のカゼイン飼料と大差がみられなかつた。然し混合乾燥飼料をコーンスターチでN0.8%に希めたものを基本飼料として飼育試験を行う時は幼白鼠の体重増加, 蛋白質効率, X. O. A. 共に類似組成のカゼイン飼料に較べ遙かに劣るにも拘らず, この基本飼料に0.2% l -L, 0.2%d l -Thを添加する時は体重増加, 蛋白質効率, X. O. A. 共にカゼイン飼料群と同程度まで増強することを観察した。しかるに0.2% l -L単独添加群は初期3~4週間の体重増加においてかなりの効をしめすも全期間を通じてその効が著しくなく, また0.04%d l -M, 0.04%d l -Try添加群においてもその効がみられず, 0.2%d l M, 0.2%d l -Try添加群においてはかえつて著しい悪影響があらわれた, これは低蛋白質に対する特定のアミノ酸多量添加によるアンバランスのあらわれとみるべきであろう。 また混合食乾燥飼料の肉と魚の乾燥重量を米でおきかえたところのN含量1.3%組飼料においてもNレベルの関係もあつてか類似組成のカゼイン飼料より幾分劣る程度でかなりよい成長をしめした。然しこの飼料への0.2% l -L添加は幾分蛋白質効率の増進に役立つことが観察された。 今回の白鼠による飼育試験において理論上補足効果組期待されていたMとTryの補足効果がみられず, 遂に計算上では充分とみられるが米組蛋白質効率を高めるLとTh組同時補足効果の著しかつた理由について考察した。 終りに臨み本実験に用いた飼育動物並びに各種資料御提供に当り多大なる御援助を給った武田研究所渡辺厚博士, 並びにスレオニンの1部を御提供下された阪大赤掘教授をはじめ, リジンの1部を御寄附下されたエーザイ株式会社, コーンスターチを御供与下された日本食品化工株式会社戸田陽三氏の各位に甚深なる感謝の意を表す。