幼動物が発育中の一時期においてCa不足に遭遇した場合, 体重や身長, 骨の発育や組成にどのような影響をうけるか, またそのうける影響には, 遭遇時の年令による差異があるのではないか, またCaが補足された場合の回復の仕方にも年令的特異性があるのではないかとの予測のもとに動物実験を行なった。 離乳直後の鼠を4群にわけ, Ca不足食 (必要量の1/3を含む) を, 第1群には離乳直後から30日間 (初期群), 第2群には離乳後16日目から30日間 (中期群), 第3群には離乳後31日目から30日間 (後期群) 与え, それ以外のときは何れも基本食を与え, 離乳後90日目まで飼育した。第4群は対照とし全期間基本食 (Caの最低必要量を含む) を与えた。体長, 体重, 骨 (1側の大腿骨と脛骨) の長さ, 重量, 灰分量, Ca量, P量を測定し次の結果を得た。 1. 体長と骨の長さは30日間のCa不足食投与によって何れの群も殆んど影響をうけなかった。 2. 体重は発育の初期におけるものほど, Ca不足による影響を強くうけ, 後期群には殆んど影響がなかった。Ca補足による体重の回復は中期群が最も劣った。 3. 乾燥脱脂骨重量はCa不足によって, 初期, 中期, 後期の順で強い影響をうけ, この場合は後期群にもかなりの影響がみられた。Ca補足による骨重量の回復は中期群が最も劣った。 4. 骨の灰分量に対するCa不足の影響には発育の時期による差異はあまりみられない。初期, 中期, 後期群とも骨重量の場合よりも強い影響をうけた。Ca補足による回復は中期群が最も劣り, 骨重量の場合よりも回復は全体にわるかった。 5. 骨のCa量は, 今回測定したものの中ではCa不足による影響を最も強くうけ, 発育のどの時期でもほぼ同程度の影響をうけた。Ca補足による回復は, 中期群が最も劣り次が初期群であった。 6. 骨のP量に対するCa不足および補足の影響は骨の灰分に対する影響とほぼ一致した。