本研究は, アナグラム解決を課題として, Aronson & Carlsmithの仮説がリスク・テイキング行動に適用されるかどうか, すなわち, パフォーマンス期待がリスク・テイキング行動と実際のパフォーマンスに及ぼす効果を吟味しようとしたものである。独立変数として期待とパフォーマンスが操作され, 2×2の4実験条件が設定された。結果を要約すればつぎのとおりである。 パフォーマンス期待とリスク・テイキング行動の関係は, 高期待-高パフォーマンス条件が最もリスキーなリスク・テイキングをおこない, つづいて低期待-高パフォーマンス条件がリスキーであった。また高期待-低パフォーマンス条件および低期待-低パフォーマンス条件はコンサーバティブなリスク・テイキングをおこない, 低期待-低パフォーマンス条件が最もコンサーバティブであった。したがって, 期待よりもパフォーマンスの方が大きな影響力をリスク・テイキング行動におよぼしており, Aronson & Carlsmithの仮説がリスク・テイキング行動に適用できないことが見出された。そして, 期待-パフォーマンス一致条件群 (高期待-高パフォーマンス条件, 低期待-低パフォーマンス条件) は期待とパフォーマンスの影響力が加算されてリスク・テイキング行動に影響を及ぼしている。しかし, 期待-パフォーマンス不一致条件群) 高期待-低パフォーマンス条件, 低期待-高パフォーマンス条件) において, リスク・テイキング行動をおもに支配したのは期待, パフォーマンスにかかわらず, 成功経験であった。 つぎに, パフォーマンス期待と実際のパフォーマンスおよび, リスク・テイキング行動と実際のパフォーマンスの間には, それぞれ有意な関係を見出すことができなかった。