本研究は, 意思決定における参加が, 成員の意思決定に対する満足度に及ぼす効果について検討しようとするものである。参加という現象を分析するための操作的概念として, 次の2つの要因をとりあげた。すなわち, (1) 意思決定場面において, 集団の成員が意思決定に対して及ぼした影響の総量 (総影響量), (2) 意思決定場面において, 集団の成員が意思決定に対して及ぼした影響量の分布, の2要因である。(2) に関しては, 参加水準 (LP) という指数を考えた。これは, 0から1までの値をとる指数であり, LP=0の場合とは, 意思決定が成員中のただ1人の成員によってなされた場合であり, LP=1の場合とは, 意思決定に対して, 各成員が全く均等に影響を及ぼした場合である。 本研究で検討した仮説は次の2つであった。 〔A〕総影響量が一定のとき, Sを成員の意思決定に対する満足度とすると, かつ, となるLPが存在する。このLPを最適参加水準 (OLP) とよぶことにする。 〔B〕総影響量がT1の場合とT2の場合を考えると, T2>T1であれば, OLPT2>OLPT1となる。(ただし, OLPT1, OLPT2はそれぞれ総影響量がT1, T2の場合の最適参加水準を示す。) 被験者として男子大学生48名を用い, 実験計画法は2要因完全無作為化法に基づいて実験を行なった。総影響量の要因では, 大・小の2水準を, 参加水準の要因では, LP=0・LP=0.5・LP=1の3水準を設定した。被験者2名, サクラ1名より成る3人集団を構成し, 引き続いて行なうことになっている集団作業 (文章作成) に用いる単語を, 単語リストの中から選択するという意思決定を求めた。総影響量は, 3人集団が決定する単語の総数を変えることによって, 参加水準は, 各成員が決定する単語の数の配分を変えることによって操作した。従属変数である満足度は, 意思決定後に質問紙によって測定した。実験の結果, 仮説〔A〕・〔B〕はともに支持された。 本実験では, 併せて, Mulderによって提起されたpower-distance reduction theoryの妥当性を検証したが, その結果は, Mulderの理論を裏づける方向にあると考えられた。