リーダーシップ能力向上を目的として, 看護学校教員60名を対象に, 三隅 (1972) によって開発されたPM感受性訓練が行なわれた。被訓練者は, 6名ずつ10グループに分れ, 90分間事例討議を行なった。その後, 討議場面における自己および他の集団成員のリーダーシップ行動 (目標達成的・集団維持的行動) を相互評定し合った。次の事例討議の前に, 被訓練者は, 前回のリーダーシップ行動に関する自己認知 (自己の行動について行なう評定) と, 他者認知 (他の集団成員からの評定) との間には認知的不一致 (ズレ) が存在することを実際の数値で知らされた。その際, 自己認知と他者認知とでは, リーダーシップ行動の評定としてどちらがより適当であるかを各被訓練者に質問することにより, 独立変数としての自己認知重視型と他者認知重視型が決められた。事例討議・相互評定およびズレのフィード・バックは, 計4回 (第1セッション~第4セッションとよぶ) が行なわれた。 主要な結果は次のとおりである。 1. セッションを重ねるに伴い, リーダーシップ行動に関する自己認知と他者認知とのズレは有意に減少した (目標達成行動・集団維持的行動両方ともに)。 2. 他者認知重視型の数 (29名) は, 自己認知重視型の数 (11名) よりも有意に多かった。 3. 認知的不一致を減少してゆく過程において, 自己認知重視型は第1セッションから第2セッションにかけて, 他者認知重視型よりも, 自己認知の方へ他者認知を近接させようとする方略 (自己のリーダーシップ行動を変化させることによって他者認知を変化させようとする方略-行動変化方略) をより多く用いようとした。また, 他者認知重視型は第1セッションから第2セッションにかけて, 自己認知重視型よりも, 他者認知の方へ自己認知を近接させるという方略 (自己認知を変える方略-認知変化方略) をより多く用いようとした。しかし, 第2セッションから第3セッション, 第3セッションから第4セッションにかけては, そのような傾向は見られなかった。 4. 認知的不一致を減少する過程において, 一般的に, 認知変化方略 (自己認知を変える) は, 行動変化方略 (他者認知を変化させる) よりも有意に多く用いられた。