反態度的行為遂行場面における態度変化に対する自己知覚の解釈と不協和理論の考え方の妥当性を検討するため, 行為者の側からなされる態度 (変化) の帰属の仕方を分析し, あわせて反態度的場面で生起する諸認知と実験への参加の動機などが調べられた。 得られた結果は, 反態度的場面がSsの側に単一でない種々の過程を始発させることを示すものであった。ただ, この場面での態度変化のほぼ3分の1は, 認知的不協和ゆえとされており, この意味では他の理論的立場と比べて不協和理論が, この種の態度変化をもっともよく説明しうるといえる。他方, 自己知覚の機能は, Ssの初めの態度位置に依存していることが知られた。つまり, 初めneutralな態度であった者の示す態度変化の一部は, 自己知覚の結果であるということができる。しかし, 忘却への帰属の数値, 決定時の認知の内容分析などの補足資料からしても, 反態度的場面での態度変化を説明する上で自己知覚理論が充分に説得力を持っているとは言いがたいようである。 なお, 付加的知見として, 論点への初めの態度の方向 (賛成か反対か) に依存して態度変容の難易の存在することが示された。このことは, 論点によっては, 賛成の態度表明をする者と反対の態度の者とでは, その根底にある認知構造が異なるためであると解釈された。