本研究の目的は, 課題状況下における集団内に働く“公平”回復の一機構を実験的に確めることにある。仮説は, 内的報酬 (地位) の不公平な分配を強要するような集団目標を課せられた集団においては, 外的報酬 (金銭) の分配の調整を行なうことによって, そのような不公平を是正するだろう, というものである。 大学生男子を被験者とする20組の2人集団に対して集団反応時間課題による共同作業を行なわせた。各2人集団は, 課題能力によって優位成員と劣位成員に分けられているが, この区別は課題の成功率に関する偽の情報 (前者は90%, 後者は50%の成功率) をフィードバックすることで操作されている。実験条件は, 集団目標が地位の公平な分配と両立するか (低目標群), 両立しないか (高目標群), および課題が成員にとって重要であるか (高技能群), 重要でないか (低技能群) の2条件で, 2×2要因配置の実験デザインである。被験者は, 共同作業前に地位分配を, 共同作業後に金銭分配について交渉を行なうよう指示された。 実験結果は仮説を支持するものであった。低目標群では, 成員間に公平に金銭が分配された。一方, 高目標群では, 公平というよりも平等に近い形で分配されており, これは, 金銭と地位を合わせた報酬全体の公平を回復しようとする傾向を示している。また, このような傾向は, 課題が重要な程より顕著であった。