本研究は親和葛藤理論 (Argyle & Dean 1965) を再検討する目的で, 2者間のEye-Contact (EC) と対人距離の関係を分析し, 2変数間に補完的関係が見られるかどうか (仮説1), また, 親和葛藤理論は親和性の高い者にのみあてはまり, 親和性の低い者にはあてはまらないのかどうか (仮説3), さらに, 親和性の高い者が親和性の低い者よりも多くのECを示すかどうか (仮説2) を検討した。 被験者は24名の男女大学生であり, FIRO-B scaleによって親和性の高低2群に分類され, さらに3つの距離条件に無作為に割り当てられた。被験者は同性のサクラと対面し, TAT図版について3分間会話したが, その間のEC量と1回のECの長さが記録された。 得られた主な結果は次の通りである。 (1) 対人距離が遠くなれば, EC量は増加し, また1回のECの長さも増していき, 親和葛藤理論は支持された。 (2) (1) の結果は両親和性群に認められ, 親和性の程度にかかわらず親和葛藤理論は適用された。 (3) 親和性の高い者が親和性の低い者よりも多くのECを示す, という結果は得られなかった。 (4) 被験者は発言中よりも聴取中に多くのECを示した。 (5) 女性は男性よりも多くのECを示した。親和性に関する仮説が支持されなかった結果に対しては, 親和性尺度と被験者数が少なかった点が問題とされた。今後は文化的側面からの追求も重要であることが示唆された。