本研究はPMリーダーシップ条件が被験者の心理-生理過程におよぼす影きょうを吟味する研究の一環として行われたものである。本研究の目的は, 純音を刺激として用い, 教示によってこれに特定のリーダーシップの意味づけをすることで, リーダーシップ条件刺激として使用することができるかどうかを吟味することにある。 25名の大学生 (三回生, 女子) が12名と13名の二群にわけられ, 一方の群には音刺激の提示はP型リーダーシップ (Tone-P条件もしくはTP), 無提示はM型リーダーシップ (No Tone-M条件もしくはNTM) を意味づけ, 他方の群には音刺激の提示がM型リーダーシップ (Tone-M条件もしくはTM), 無提示がP型リーダーシップ (No Tone-PもしくはNTP) と意味づけた。 眼前1.2mにおかれた175×175mmの白紙に直径9mmの黒点が32~35個ランダムな位置関係に印刷されているものを早く正確にかぞえる課題が与えられた。3試行を1ブロックとして全体で8ブロックおこない, 奇数ブロックでは125hzの純音が1秒間隔で断続的に提示され, 偶数ブロックで無提示とした。課題遂行中の被験者の生理反応をプレティスモグラフで測定した。 質問紙による被験者の評定では, Tone-P条件 (TP) はTone-M条件 (TM) あるいはNo Tone-M条件 (NTM) よりP機能評定点が高く, TMはTPあるいはNTPよりM機能評定点が高くなった。HRおよびプレティスモグラフ振幅を指標とした場合, TPはNTMよりNTPはTMより, そしてTPはTMより, それぞれより高いantonomic arousal levelを示す生理反応, すなわちHRの増加と脈波振幅の減少がみられた。課題遂行速度では, TPはNTMより, NTPはTMより, そしてTPはTMより成績がすぐれていた。 これらの結果は, 言語によってリーダーシップ条件刺激を構成した従来の研究結果と同じものである。以上の結果から, 純音刺激にP型もしくはM型のリーダーシップを意味づけ, リーダーシップ条件刺激として用いることが可能であると考察された。