本研究は, 社会的促進現象にみられる他者存在と個人行動との関わりをより明確にするため, 課題の反応しやすさの程度, 存在する他者の人数およびその存在形態が個人の遂行にどのような影響を与えるかを, 共行為・聴衆両事態において検討し, あわせて両事態での効果の比較を行なった (実験I: 共行為事態, 実験II: 聴衆事態)。 被験者は大学生144人 (男女各72人)。課題はアルファベットの並びかえ作業であった。 主な結果は次のとおりである。 1. 反応しやすい課題は, 共行為・聴衆いずれの事態でも他者存在により, その正反応数が増加し, 特に共行為事態では誤反応数の減少もみられた。反応しにくい課題は, 聴衆事態においてむしろ誤反応数が増加した。 2. 存在する他者の人数による効果の違いは共行為事態においてはみられず, 聴衆事態において聴衆が1人の場合より聴衆が3人の場合に, 反応しやすい課題での促進効果がより大となる傾向を示した。 3. 他者の存在形態の違いによる課題遂行量の差は, いずれの事態においてもみられなかった。 4. 促進のみられた課題の正反応数を試行ごとにみると, その効果が特に前半に集中していることが示された 以上の結果から共行為効果と聴衆効果について若干の検討が加えられた。