本研究は, 自己評価をなそうとする個人が, 比較情報の有用性及び自尊の感情との関わりで, どのような情報探索を行うかを明らかにするとともに, Festinger (1954a) の述べる向上性の動因 (unidirectional drive up-ward) についても検討を加えることを目的として行われた. 被験者は大学生84名 (男女各42名) て, 認知的柔軟性や洞察力の豊かさを調べるという偽装目的のもとに, 相互に関連のあるとされる2つのテストを行うよう求められた. 第1テスト終了後, フィードバックの有無とその性質 (得点の高・低) による自尊の感情の操作がなされた. 第2テストは困難度が10段階のものからなっており, 被験者は, このなかから自らの取り組むべき課題の決定を迫られた. その際, 決定を行う前に他者との比較情報を提供する用意があるので, その必要性などを回答してほしいと告げられる決定前条件と, 決定した後にそうした操作がなされる決定後条件とに分けられた. 結果は, 決定前条件においてより積極的な情報接触がみられ, 比較情報を有効に利用しうる状況にあるとき, 自己評価への欲求が大となることが示された. 自尊の感情と比較情報を求める程度との間には明確な関係はみられず, また向上性の動因については, Fes-tingerの考えから予想されるような結果は得られなかった.