本研究は, 実験室的に構成された集合的緊急事態において, 被験者によって認知された脱出成功率が, 脱出行動に伴う混雑発生の程度や, 実際の脱出成功率に及ぼす効果を吟味したものである. 被験者は, 制限時間 (24秒) 以内に, 脱出しなければ, 電気ショックが与えられるという緊急事態に置かれた. しかも, 脱出口は1つしかなく, 1度に1人ずつしか脱出口を通過できない隘路状況が設定されていた. すなわち, 1人の被験者だけが, 3秒間脱出スイッチを押すと, その被験者は脱出できるが, 2~4人の被験者が, 同時に脱出スイッチを押すと, 混雑が発生し, 脱出口を通過できなくなる, という実験事態を構成した. 脱出成功確率の操作は, 試行前の教示によって行なった. 実験条件は, 脱出成功確率-大, 中, 小の3条件と, 脱出成功確率について操作を加えない統制条件であった. 4名の被験者 (男子大学生) を1つの実験集団とする, 40集団を用いた. 実験結果は, 次のとおりであった. (1) 脱出成功確率が大きいと教示された条件ほど, 被験者によって認知された脱出成功確率も大きくなり, かつ脱出行動に伴う混雑度が減少し, 脱出成功率が増加した. (2) 統制条件において被験者の認知した脱出成功確率は, 脱出成功確率-小の条件よりも大きく, 中の条件よりも小さかった. また, 統制条件における混雑度と脱出成功率の大きさは, 認知された脱出成功確率の大きさにほぼ対応し, 脱出成功確率-小の条件と, 中の条件の間であった.