本研究は模擬被災状況におけるリーダーシップ行動が避難行動, 即ち, 脱出成功率や混雑発生の度合, 並びに攻撃, 譲歩反応に及ぼす効果について実験的に検討したものである. 被験者は大学生132名で, 同性からなる6名集団が22集団構成された. 6名中, 1名がリーダーとして, くじ引きにより選出された. リーダーは他の5名のメンバーに対して, 自由に発言, 指示をおこなうことが可能であった. 実験条件として 「非隔離リーダー条件」 と 「隔離リーダー条件」 とが設定された. 「非隔離リーダー条件」 はリーダーとメンバーが同室にいて, リーダーがメンバーの配置構造を直接観察できる条件である. 一方 「隔離リーダー条件」 はリーダーがメンバーとは異なる別室にいて, メンバーの配置構造等についての手がかりがほとんど得られない条件である. 結果は, 次の通りである. 1. 脱出成功率は 「非隔離リーダー条件」 , 「隔離リーダー条件」 そしてリーダーがいない 「対照群」 の順で低くなる結果が見出された. 一方, 混雑度については 「非隔離リーダー条件」 , 「隔離リーダー条件」 そして 「対照群」 の順で高くなる結果が見出された. 2. リーダーが脱出者を明確に指定 (IND) し, 順序づけ (ORD), そして脱出を支持 (SUP) し促進する (FAC) ような, 具体的かつ強力な指示, 発言をおこなう場合に, 脱出効率が高くなる結果が見出された. これに対し, リーダーが独言 (MUM) を言ったり, 一方的に譲歩を強制する (CON) ような発言, 指示をおこなう場合には, 脱出効率が悪くなる結果が見出された.