被害の大きさが等しい事態で, 欲求不満の帰因情報を操作することによって, 被害者の攻撃反応が変化するかどうかが欲求不満物語を使って検討された. 男女80名の大学生に対して2種類の状況を描いた欲求不満物語が呈示され, 5質問測度によって被害者の欲求不満行動が評定された. 測度毎に, 性別 (2) ×帰因情報 (攻撃意図, 過失, 利他的動機, 事故) ×物語状況 (2) の分散分析が行われ, 次のような結果を得た. (1) 攻撃意図が最も被害者の攻撃反応を強く誘起し, 次いで過失, 利他的動機, 事故の順となった. この順序は不合理判断次元に対応すると思われる. (2) 内面的情緒反応 (怒り) にも同様の条件差が観察され, 欲求不満の不合理性と攻撃反応の関係については, 反応抑制説よりも動因低減説が有力視された. (3) 欲求不満反応を帰属過程が媒介する仕組について, 阻止者への自由の帰属と態度推測のふたつの見解に関する証拠が提出されて議論された. いずれも肯定的に結論付けられた. (4) 男女差は利他的動機による阻止行動をどれくらい合理的とみなすかに関して生じた. 女性は個人の行動が家族に制約されることを受け入れ傾向があると推論された.