本研究では, 緊急避難状況における2つの避難誘導法-指差誘導法と吸着誘導法-を現場実験により比較検討した。指差誘導法とは, 誘導者が大声とともに出口の方向を指し示して誘導する方法であり, 従来, 避難訓練の場で広く用いられてきた避難誘導法である。一方, 吸着誘導法とは, 誘導者が自分の近辺にいる少数の避難者に対して, 自分についてくるよう働きかけ, それらの避難者を実際にひきつれて避難する方法であり, 本研究で初めて導入された避難誘導法である。現場実験の結果, 吸着誘導法の方が, 指差誘導法よりも短時間に, より多くの避難者を避難させたことが見出された。吸着誘導法においては, 誘導者を核とする即時的小集団が形成され, この即時的小集団の波及効果によって, 多数の人々の迅速な避難が達成されたものと考察した。