形成されている対人魅力と評価的に一貫しないその人の行動は, 外的原因に帰属されることで認知のバランスが保たれる傾向がある。しかし, この傾向は, 魅力形成の程度が大きく確信度が高い場合にみられるだろう。確信度が低い場合には, 行動を内的原因に帰属し, むしろ魅力が変化するであろう。以上の考えを背景に, 本研究では, 態度の類似性を用いて形成された刺激人物に対する魅力が, その人物の好ましくない行動についての原因帰属に及ぼす影響について実験的な検討を行った。 刺激人物の態度回答として, 類似比率の高・低の要因と項目数の多・少の要因とを組み合わせた4種類が用意された。これらのいずれか一つを情報として与えられた後に, 統制条件の被験者は, 対人魅力の測度を含む対人判断尺度に回答した。帰属 (実験) 条件の被験者は, 刺激人物の起こした交通事故についての記述を読んで, その行動の内的および外的原因帰属を評定した。またその後, 対人判断尺度にも回答した。 得られた主要な結果は, 以下のとおりであった。 1. 形成された対人魅力の水準は, 類似態度比率が高いほうが有意に高かったが, 態度項目数の要因の影響はなお, 本論文の“問題”の項で, 両者があたかも“一方がポジティブならば他方がネガティブになる”というような相補的で二値的な判断事象として取り扱ったのは, あくまでも議論を明快にするためであった。“不協和量 (の低減) ”に相当するような“インバランス状態 (の低減) ”概念を導入すれば, 帰属に関して同じ内容で量的な予測が立てられたであろう。認められなかった。 2. 対人魅力の確信度は態度項目数が多かった場合のほうが大きい, という点に関する証拠は得られなかった。 3. 実験仮説どおり, 類似態度をもつ人物の好ましくない行動を外的原因に帰属する傾向は, 態度項目数が多い場合のほうが少ない場合と比べて有意に大きいことが認められた。 4. 非類似態度をもつ人物の好ましくない行動を外的原因に帰属しやすい傾向はなく, 態度項目数の効果も認められなかった。 5. 事後的分析から, 類似態度をもつ人物の好ましくない行動が外的原因に帰属された場合には対人魅力の水準は高いまま維持され, 内的原因に帰属された場合には低下する傾向が示された。