本研究は, 模擬的被災状況におけるリーダーシップ行動が, 避難行動, すなわち脱出成功率, 混雑低減の度合および攻撃, 譲歩等に及ぼす効果について実験的に吟味したものである。特にリーダーシップ行動をPM式リーダーシップ理論の枠組に添ってPM型, 計画P型, 圧力P型およびM型に類型化しその効果性について吟味せんとしたものである。 被験者は大学生372名で, 同性からなる6人集団が62集団構成された。このうち, 32集団を実験1, 30集団を実験2に配置した。実験1では, 実験開始後から, また実験2では実験開始30秒後からリーダーシップ条件を導入した。リーダーは6名の被験者と1名のサクラ計7名のくじ引きによりサクラが選出されるようにした。リーダー (サクラ) は, 他の6名の被験者に対して, 脱出のための指示, 発言をおこなう。但し, リーダーがおこなう脱出のための発言, 指示, すなわちリーダーシップ行動は, あらかじめPM式リーダーシップ理論に基づき類型化したPM型, 計画P型, 圧力P型そしてM型のいずれかであった。ここで, PM型とは, 計画P型とM型とが結合した複合型である。計画P型とは, 脱出者を明確に指定し (IND), 順序づけ (ORD), 脱出を支持する (SUP) 発言や指示である。具体的には, “右 (あるいは左) から” “順番に1人ずつ”といった発言や指示である。圧力P型は, 脱出を促進, 強制する発言や指示 (FAC) で, 具体的には, “急いで” “早く早く” “時間がないそ”などである。M型は, 情緒安定指示で, 具体的には, “落着いて” “大丈夫”“時間は十分ある”などの発言, 指示である。 結果は次の通りである。 1. 脱出成功率は, PM型, 計画P型, M型そして圧力P型の順で低くなる結果が見出された。一方, 混雑度については, 上記の順で高くなる結果が見出された (実験1および実験2)。 2. 攻撃, 譲歩の反応強度は, PM型, 計画P型, M型そして圧力P型の順で高くなる結果が見出された (実験1および実験2)。 3. リーダー行動の適切性の認知では, PM型, 計画P型そしてM型の順で適切とする者の割合が低くなる結果が見出された。また, 時間経過 (ピッチ音) の認知では, 上記の順で気になったとする者の割合が高くなる結果を示した (実験2)。