本研究は, 2者の相互作用場面におけるその2者の関係 (好意度に差がある) と対人距離の違いが言語行動と非言語的行動にどのような影響を及ぼすか-補償か相互性か-を面接場面で調べるのを目的とした. 同時に話題の親密さによる違いも調べた. 研究を進めるにあたっては, 従来の1対1の行動を問題とするワンチャンネル・アプローチと異なり, いくつかの行動を同時に取り上げるマルチチャンネル・アプローチをとった. そして, それらの行動によって表わされる, かかわりの程度を示す「直接性」という1つの指標にまとめて検討した. 男子大学生60名 (1年生) が被験者として参加し, 男子大学生1名 (4年生) がすべての被験者に面接した. 得られた主な結果は, 次のとおりである. 好意の違いの影響がみられたのは第三者による自己開示度の評定のみであった. また, 対人距離による影響はBLFの時間と平均時間にみられただけであった. ECの時間, 回数と発言時間は親密さの高い話題より親密さの低い話題の方が多く, ECの平均時間と微笑の時間, 回数, 平均時間と潜時は親密さの低い話題より親密さの高い話題の方が多かった. 次に, すべての指標の測度値に, 因子分析 (主因子解-バリマックス回転) を行い, 7つの因子を抽出した. さらに, これらの因子と独立変数の影響を取り除くようなダミー変数を加えて, 実験終了後の被験者の面接者に対する印象を重回帰分析した. そして, その回帰係数でそれぞれの行動の指標を重みづけて全体の行動で示されるかかわりの程度を示す 「直接性」 を算出した. その結果, 対人距離による 「直接性」 が高くなる (「直接性」 はかかわりの程度を示すので, 対人距離は近くなるほど 「直接性」 が高くなる) と, 他の行動によってされる 「直接性」 も高くなるという相互性となった.