本研究の目的は, 「父親」 と 「友人」 という伝達対象の違いが, 主としてそこで伝達される対人認知のカテゴリー使用にどのような影響を与えるのかを検討することにあった. 「父親」 条件の被験者 (n=30) は自分の父親に対して, 「友人」 条件の被験者 (n=30) は自分と同性の親友に対して, それぞれ5名の人物を選択し, 記述することが求められた. 結果は, 他者記述において伝達された情報の量や, 他者記述において使用された対人認知のカテゴリーの数が伝達対象の違いによって異なることを示している. また, 「親友」 条件の被験者は, 「父親」 条件の被験者と比較して, より親密な異性とより親密でない同性を記述対象として選択する傾向にあったことが見出された. これらの結果は, 対人コミュニケーション過程における 「編集」 の機能の点から議論された.