本研究の目的は, 中学生と教師とのコミュニケーションの量を規定する要因の1つとして, 生徒の認知する教師との 「意見類似性」 があるであろうとの仮説を検証することにある. 被験者は東京都内の中学生327名 (男子171名, 女子156名) である. 教師とのコミュニケーションの測定には, 久世ら (1972a) の用いた 「困った場面における自己開放性 (自己開示) 」 の値を使用した. 一方 「意見類似性」の指標は, 中学校生活での諸問題に関する意見や考え方についての被験者の賛否ならびに教師集団の賛否の比率の推定を回答させ, その結果にもとづいて算出された. なお, 本研究においては教師に対するものと比較するため, 自己開示については親友などについての資料, また「意見類似性」 については生徒集団に対する資料も同時に回答させた. 主な結果は次のとおりである. (1) 自己開示の大きさは, 学年別・性別のいずれにおいても, 親友に対するものの方が教師に対するものより大であった. (2) 「意見類似性」 については, 学年別・性別のいずれにおいても, 生徒集団に対するものの方が教師集団に対するものより大であった. (3) 自己開示と 「意見類似牲」 の相関係数は, 絶対値は大きくないものの, 対教師・対生徒のいずれにおいても正の有意な相関関係がみとめられた. (4) 「意見類似性」 の高得点群と低得点群とで比べると, 自己開示の得点は前者の方が高かった. (5) 上記 (3) および (4) に述べたような傾向は, 教師に対するものよりは生徒に対するものの方が顕著であった. 以上の結果, および一部被験者を対象とした面接法における各被験者の発言から, 生徒と教師とのコミュニケーションの大きさ (個人差) を規定する要因の1つとして, その生徒が認知する教師との 「意見類似性」 が存在すると主張することが許されるであろう.