本研究は, (1) 意思決定過程における内的状態のパターンを検討すること, (2) 意思決定過程における情報探索ストラテジーと内的状態との関連性を検討することを目的とした。 意思決定過程における情報探索ストラテジーを直接追跡するために, 情報モニタリング法が用いられた。被験者は, 提供が要請される状況において生起すると想定される, 実行可能な行動選択肢群の内から, あるひとつの行動を選択するまでの過程をシミュレートし, 意思決定後, 決定過程や決定時における内的状態に関する質問に回答した。 得られた主な結果は, 次のとおりである。 1. 内的状態に関する項目を因子分析したところ, 「コンフリクト」, 「リスク」, 「確信」に対応する3つの因子が抽出された。 2. 決定段階毎に設定された情報探索ストラテジーの指標と内的状態に関する項目との関連構造を探索する正準相関分析を行ったところ, 「単純化」と「最適化」の現象に対応する2対の正準変量が抽出された。「単純化」に関する正準変量を検討した結果, 特定の行動属性に焦点を絞って, 検討する行動選択肢を絞って行くようなストラテジーは, 情報過負荷によるコンフリクト状態を低減することが示唆された。また, 「最適化」に関する正準変量を検討した結果, 特定の行動選択肢をそれぞれ綿密に検討するようなストラテジーは, 決定の確信度を高めることが示唆された。さらに, 正準相関分析の結果は, 決定段階の移行に伴って, ストラテジーと内的状態との関連構造が変異することを示したが, このことは, 意思決定の進行に応じてストラテジーの心理的機能が変化することを示唆している。